あなたは普通の人ですか? <空間ゼリー「暗ポップ」>

i赤坂レッドシアターで行われている、劇団・空間ゼリーの本公演「暗ポップ」を見てきました。

私が空間ゼリーを知ったのは、三好絵梨香主演の舞台「猫目倶楽部」、「猫目倶楽部2」の脚本家や演出家がいる劇団だから(出演者も多い)。私のハロプロ属性の賜物ですね。
その空間ゼリーが本公演ををやるというので、というか、猫目倶楽部2の公演後に、劇団員かつ猫目倶楽部2の出演者である阿部イズム、猿田瑛、さらに脚本の坪田文、演出の(出演も)深寅芥が勢揃いでチケットやTシャツを売っていたから。ちょっと見てみてもいいなぁと、素直に思ったのです。それで、チケット担当だった猿田さんに「チケット下さい」と言って、今日に至る。(猿田さんの横には、主演の斎藤さんもいたようです。いま思えば。)

空間ゼリーの本公演といいながら、出演者を見てみると、小川麻琴(元モーニング娘。)、能登有沙(アップフロントエッグ)、仙石みなみ、澤田由梨(以上ハロプロエッグ)。ハロプロ系の出演者が多いなぁと驚いたのは、後のことです。

見終わっての感想。以下、ネタバレ。

決して、重苦しいものではないのだけど、深いというか、一筋縄に理解できるものではないということ。猫目倶楽部が勧善懲悪の実にイージーなストーリーだから、それと比べたらダメよと。

舞台になっているのは、心療内科のショートステイセラピー。出演者はセラピーの参加者と病院関係者。セラピーの参加者(患者というほどでもない)が「暗」チーム、病院関係者は「ポップ」チーム。リバーシブル劇だといいます。

リバーシブル劇とは何なのでしょう。

「暗」チームのリーダーは、主演の斎藤ナツ子が演じる佐伯華。人と話すことが極端に苦手で、打ち解けないと、声を出すことすら出来ない。だから、そもそも打ち解けることが難しい。自分のことを「普通じゃない」と思って生きてきた。
「ポップ」チームのリーダーは、小川麻琴が演じる駒井亜矢。セラピーの主任医師。とにかく明るい、ガッツが売り物。まわりの看護士からも、憧れの存在と見られている。

この、「暗」と「ポップ」の対比がリバーシブルなのでしょうか。

ストーリーは、華が、セラピーの他の参加者や、入院病棟の患者・清水との不器用な交流の中で、少しずつ明るく振る舞えるようになる姿を中心に進んでいきます。
セラピーの最終日、ちょっとした事件があって、その翌日は退所日。それなりに明るい顔で帰宅の途につく華。いつもの笑顔で見送る亜矢。
一人になった亜矢に声をかける、医師・有栖川(深寅芥)。ちょっと嫌みな院長の息子。

「僕の棚から、薬を持ち出さないでくれるかな」
「すいません。もう、大丈夫ですから。頑張ります」
「駒井君、頑張らなくていいんだよ」

「駒井先生、患者さんがお待ちですよ」と、看護士の声が遠くで聞こえて、「はーい」と、いつものように駆けだしていく。
これが最後のシーン。元気が売り物の亜矢も精神安定剤を服用していたという事実。

リバーシブルって、こういうことなのでしょうか。

私は、普通なのでしょうか。あなたは、普通の人ですか?
「普通だよ」と答えたあなたに、伺います。
普通というのは、みんなと同じということですか?
普通って何ですか?

この公演を見て、私はこう思います。
普通と普通じゃないは、紙一重です。多くの普通の人は、どこかで普通じゃないところを抱えて生きています。普通じゃない人も、やはり普通の部分を持っていて、その境界線というのは限りなく曖昧です。
それなりに普通でないと、社会生活を送ることは難しいのですが、普通にするにはどうすればいいのでしょう。それは、自分が他の人とは違う、人はみんな違うということを認めることであろうと思います。普通というのは、他の人と同じということではないのです。

華が退所のときに言った「壁」というのは、そういうことなのだと思います。
その言葉を聞いて、戸惑いの表情を浮かべた亜矢。そのことに、亜矢はまだ気づいていないのかもしれません。

暗ポップの公演は、明日まで。若干は、当日券が出るようです。(最終公演は、澤田由梨のハロプロエッグ卒業公演になるので、チケット確保は困難であろうと思います。)
劇団オンラインでDVDが発売されますので、興味をお持ちの方はどうぞ。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。