前評判どおりの名演技!「LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-」を観てきた

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モーニング娘。’14の選抜メンバーとスマイレージ、さらにハロプロ研修生からもメンバーを加えたミュージカル「LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-」を観てきました。

ステーシーズを上回るかも・・・

前評判が高かったのは知っていましたが、まさかここまでとは。
モーニング娘。がゴシックもののミュージカルをやり始めたのは、同じ末満健一氏が演出の「ステーシーズ〜少女再殺歌劇」で、あれも良かったのですが、今回はそれを上回るかも。

ステーシーズの時は、そもそも大槻ケンヂの原作があって音楽も優れていたし、田中れいなもいたし、そもそも河相我聞など本物の役者さんもいました。
しかし、リリウムにはハロプロメンバーしかいないんだよね。それで、ステーシーズを上回るかもしれない・・・と思わせるものが出来たというのは、素晴らしい。

鞘師里保・和田彩花・小田さくら

主演の鞘師里保と和田彩花。この2人はそれぞれのグループでのエースであるし、そこそこやるのは分かっていました。本人たちはそういうことを言われるのは辛いだろうけれども、やっぱりそういうふうに見るわけで、その期待に違わぬ演技と歌(ミュージカルだからね)を魅せてくれました。

鞘師里保は堂々たる主演ぶりで素晴らしい。でも、それが普通に見える。やって当然というか、あれでこそ鞘師だ、エースだという。

和田彩花はちゃんとした演技を見るのは今回が初めてだったのですが、今回の出演者の中で最年長ということもあって堂々としていたし、何となく冷たそうで、思い詰めてそうな役柄は、意外と本人のキャラクターに合っていたのではないかと思います(アフタートークでの工藤遥に対するデレぶりというか、照れぶりが凄かったですが・・・)。

小田さくらはこのストーリーのキーパーソン。ストーリー自体にはそこまで絡んでこないのだけど、歌のシーンが非常に重要になる役どころだったので、彼女の本領が発揮できたのではないでしょうか。

衝撃の名演!田村芽美・中西香菜

衝撃を受けたのは、まずスマイレージの田村芽美。鞘師、和田という両エースを向こうに回して、十分な存在感がありました。アフタートークで工藤遥が言っていたように、この3人での歌のシーンは、このミュージカルの一つの見せ場であったろうと思います。

さらに、スマイレージの中西香菜。彼女はショートカットのカツラをつけて工藤遥とともに2人だけの男性役。もちろん、工藤遥は地毛ですが。今回、誰が出るかは知っていたけど、どの役をやるかまでは把握していなかったので、あの男性役の人は誰だろう・・・。消去法で行くと中西香菜しか残ってないのだけど・・・。でも・・・。どこかから役者さんを連れてきたわけでもないし、研修生にあそこまで出来る子がいたのか・・・。と、一人考えていたのですが、やっぱり中西香菜。小田さくらとのシーンは、歌に定評のある小田と十分に張り合っていたと思いますね。

工藤遥!

で、触れないわけにはいかないのが工藤遥です。あんまり言うとネタバレになってしまうのだけど、工藤遥は単なるキャラを活かしたチャラ男役ではない。

中西香菜がわざわざショートのかつらを付けてまで男性役をやったのは、実力による配役だと思うのです。だとしたら、もともと少年キャラである工藤遥の方は、脚本家のアテ書きというか、甘やかされてるなと。声質もはっきり言って弱いし、滑舌も良いわけではない。中西香菜が良かっただけに、その差が見えてしまったなと・・・。

でもねぇ、そうじゃないんだね、工藤遥。劇を全部見終わった後から振り返ると、前半の弱さは単なるギャップ狙いだったのか、すべて計算ずくのことだったのでは・・・と。工藤遥、良かった。

鈴木香音・竹内朱莉・勝田里奈・佐藤優樹

劇全体を振り返ると、序盤はちょっと眠かったかなぁと思います。まぁ、仕方ないよね。劇にはストーリーというものがあって、きちんと説明が要る。

でも、鈴木香音、竹内朱莉、勝田里奈の3人組がちょうど良い息抜きで小ネタを差し挟んで、ダレるのを防いでくれました。あと、佐藤優樹とハロプロ研修生の3人もコメディエンヌで、色を付けてくれたと思います。

で、中盤から終盤にかけて。ここは怒濤の展開が待っていて、すべての謎解きがあって、衝撃のラストシーンまで突き進むのだけど、その先鞭を付けたのが鈴木・竹内・勝田の3人組だったのは、単なる息抜き担当ではなかったね。

佐藤+研修生の方もある出来事をきっかけに終盤でストーリーに深く絡んできましたが、これもアイドルファンの心理を突いたニクい演出でした。(ファンはやっぱり自分の推しの子が活躍して欲しいと思うもの。)

譜久村聖・福田花音・石田亜佑美

譜久村聖、福田花音のお姉さん組は、役柄もお姉さん組で出番も多く、安心して見ていられました。特に譜久村聖は、ああいう上品な言葉遣いでお姉さん役をやらせるとピタッとハマる。これも、分かった人の配役だなぁという感じ。

石田亜佑美も出番は多く、時にはコメディも担うというオールマイティな働き。ストーリーに直接絡む感じではなかったのですが、今回は劇の調子をずっと作っていたように思います。テンポメーカー。野球で言えば先発して6回3失点でしっかりクオリティスタートしましたよっていう。エースじゃないけど。先発ローテの3番手くらいで。こいつがいないと、長いシーズンが戦えない。

重い話・・・

ストーリーは、今回も重い。ステーシーズで重い話をやるのを解禁してしまったんだよね。だから、モーニング娘。黄金期の頃にやっていたミュージカルのように、見終わったら軽い気持ちでそそくさと家路に向かうなんてことが出来ません。なんというか、客席に立ち尽くしてしまう感じ(まぁ、座ってるんだけど)。その場でしばらく余韻に浸っていたい気持ち。でも、余韻といっても良い余韻じゃないんだなぁ。空しい。悲しい。人は必ず死ぬ。ヴァンパイア(そう、彼女たちは吸血鬼を演じたのである)も、物語の設定上、1人?を除いて死ぬ。だから、人は(ヴァンパイアは)美しい。そういう命の賛歌ではある。それが、この悲しいストーリーの唯一の救いであり、主題。
暗いストーリーと演出の中で、そういう主題がしっかりと感じられたのは、良かったと思うのです。

そんなわけで、見応えがしっかりある「リリウム〜少女純潔歌劇」ですが、東京公演は池袋サンシャイン劇場で明日まで。残りは大阪公演だそうです。

ステーシーズも見てみよう!

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この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。