ソフトウェア・エンジニアリングの倫理規定と実務規定

「ソフトウェア開発プロフェッショナル」に、ACMとIEEE Computer Societyの両方で採択されたソフトウェア・エンジニアリングのための倫理規定と実務規定の翻訳が掲載されていました。
ソフトウェア技術者の皆さんには、ぜひ何度でも読んで欲しい文章です。私は読んでみて、身震いがするほどでした。

ソフトウェア技術者は、ソフトウェアの分析、仕様決定、設計、開発、テストおよびメンテナンスにおいて、有益で尊敬に値する専門職となるべく、最大限の努力を尽くさなければならない。社会の人々の健康、安全、福利に対する責務に従い、ソフトウェア技術者は以下の8原則を遵守せねばならない。

1.公共性 ソフトウェア技術者は、公共の利益と調和するように行動しなければならない。

2.顧客および雇用者 ソフトウェア技術者は、公共の利益と調和しながら、顧客と雇用者の最高の利益を実現するように行動しなければならない。

3.製品 ソフトウェア技術者は、その製品と、それに伴う変更が、専門家として可能な限り最高の水準に合致していることを請け負わなければならない。

4.判断 ソフトウェア技術者は、専門家としての判断において、誠実さと独立性を維持しなければならない。

5.管理 ソフトウェア・エンジニアリングの管理者とリーダーは、ソフトウェア開発の管理ならびにメンテナンスの管理に対する倫理的アプローチに賛同し、それを推し進めなければならない。

6.専門職 ソフトウェア技術者は、公共の利益と調和するよう、その専門職の誠実さと名声を高めていかなければならない。

7.職業上の同僚 ソフトウェア技術者は、他のソフトウェア技術者に対して、公正で協力的でなければならない。

8.自己の向上 ソフトウェア技術者は、自己の専門職の実務に関する、生涯続く学習に参加し、かつその専門職の実務に対する倫理的なアプローチを推し進めなければならない。

本書では、ソフトウェア技術者が、医師や弁護士、公認会計士と同様に、専門職としての領域と名声を確立するという方向性を提唱しています。免許制度の整備についても言及し、その暁にはソフトウェア技術者が個人として法律上の責任を負い、非現実的なスケジュールの強制や、目先に捕らわれた設計への妥協、ソフトウェアを無理に出荷するために品質を犠牲にせよという求めに対して、「私の職業倫理の基準では、この状況の品質のごまかしを認めるわけにはいきません。これを認めれば、私の免許は取り消されるか、訴えられるでしょう」と言うことになる-と言うのです。

これこそが、私が求めていたもの。プロフェッショナルなソフトウェア技術者としての誇りです。これだけの誇りのある職業であるということを、しっかり認識することが出来れば、その道を究めていこうというモチベーションにもなるものです。

とにかく、お勧めの1冊です。

ソフトウェア・エンジニアリングの倫理規定と実務規定の5.2版(日本語訳)が、こちらにありました。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。