AmazonとFacebookが開くソーシャルマーケティングの主戦場

米Amazon.comとFacebookが協業して新しいリコメンデーションサービスを始めたというので、話題になっています。
その内容は、以下のようなものです。

  • FacebookのプロフィールからAmazonがおすすめの商品を紹介する
  • Facebookでの友人の誕生日が近づいたらAmazonのウィッシュリストを表示する
  • 友人のFacebookのプロフィールから贈り物におすすめの商品を紹介する
  • 友人のプロフィールを参照して似たような関心を持つ人を探し出す

つまり、Facebookが持つ個人の興味や友人関係に関する情報を元にして、Amazonの商品やサービスに関するリコメンデーションを提供しますよということです。
リコメンデーションを行うには、その顧客の興味をいかに集めるかが鍵となります。いままでもAmazonは自社サイトでの購買履歴やアクセス状況、ある商品を持っているかどうかをサイトで聞き出すなどして、リコメンデーションをやっていました。しかし、あくまでAmazonが集めた情報に限られていたのです。

このように、Amazonをはじめとする多くのショッピングサイトが顧客の興味を調べる方法を自らのサイトに組み込んでいます。しかし、顧客からすると能動的に情報を提供するのは不安ではないでしょうか。情報を提供したらマーケティングに使われることが明らかだからです。ウィッシュリストに自分が欲しいものを登録しておけば誰かがギフトしてくれるかもしれません。ただ、おそらくはAmazonが顧客を分析する際に材料になっているだけです。

しかし、Facebookは違います。Facebookはショッピングサイトではありません。自分の興味に関する情報を提供するのは、Facebookのためではなく、自分がコミュニケーションする相手を探したり、実際にコミュニケーションするためです。最初からマーケティング目的であることが透けて見えるAmazonのウィッシュリストと比べると、圧倒的に情報が集まる量が違うのです。

Facebookと連動すると、顧客に対する情報量が一気に増え、商品への興味だけではなく友人関係に関する情報まで手にすることが出来ます。友人関係の情報があれば、贈り物でAmazonを訪れたときもリコメンデーションが提供できます(いままではAmazon独自のウィッシュリストだけでした)。友人が好きな商品なら本人も好きな可能性が高いので、そうしたリコメンデーションも可能になります。

あくまでこのサービスは、自ら望んだユーザにだけ提供されます。自ら、AmazonのアカウントとFacebookのアカウントを結び付けなければなりません。また、Amazonでの購入履歴がFacebookに流れることはありません。今後、同様のサービスが続出することが予想されますが、こうしたオプトイン型のサービスになるのは当然のことでしょう。
いつか始まるだろうと思っていたことが、ついに始まったという気がします。日本にはいつ入ってくるでしょうか。日本のFacebookユーザは増えているとはいえ、まだ一般的とは言えない状況です。Mixiあたりは何か準備をしているのでしょうか。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。