今日、飲みながらではあるもののITエンジニアが今後進む4つの道について話をしたので、何度かブログでも書いたことはある話ですが、もう一度まとめて書いておこうと思います。(飲み会の席では3つといったのですが、ベンダーの道もあるので4つでした。)
今後、5年くらいの間でITエンジニアが進めるであろう道を考えるには、現在のクラウドの普及度合いがどの程度のものになるかを見極めなければなりません。クラウド、特にアプリケーションがクラウドになるSaaSが普及すれば、SIerにいるSEやプログラマの仕事場が減ります。いままで顧客毎に毎度作っていたものが、ベンダーが一度提供すれば以後は作らなくて良くなるわけですから、当然です。
しかし、そのような状態に本当になるのかには疑問符がつきます。SaaSのようなチャレンジは今回が初めてではなく、各種業務パッケージやERPパッケージの販売、ASP(Application Service Provider)などいくつかの失敗(とまではいかなくても、当初の技術的目標を果たせたとは言えない状況)を我々は経験しています。SaaSがまた同じ轍を踏む可能性は否定できません。
ただ、IT業界がSaaSのようなアプリケーションシステムの再利用性の向上、ひいてはコモディティ化を目指すという方向性をとり続けることは間違いなく、いずれ成功する時が来るでしょう。SaaSで一気にその時になるのかもしれませんが、おそらくは徐々に進むことになるのだと思います。その「徐々に」という際の尺度は、対象業務がコモディティ化出来るか、ベストプラクティスが作れるかということに因ります。
例えば会計システムのように、同じ仕組みで業務を進めなければならない規制があるものはコモディティ化が進みやすいといえます。それから、総務や人事といったバックオフィス系の業務もそうだと思います。だとすると、どうしてもコモディティ化できないとなるのは、それが正に競争戦略のど真ん中にあるような業務です。この部分は差別化=利益となるので、仮にコモディティ化されたとすれば一瞬で価値を失います。だから、どれだけ時代が進んでも、この部分だけはフルスクラッチでの開発が続くでしょう。
しかし、SIerにとっては問題があります。競争戦略のために差別化されるシステムは、ASAP(As Soon As Possible:出来るだけ早く)で作らなければなりません。仕様をまとめて外注に出して作ってもらうなんていう悠長なことは出来ません。システムを作りながら仕様を考えるようなスピード感が必要であり、それが出来るエンジニアは技術力はもちろん、その業務、ビジネスに関する深い理解が必要となります。そういうシステムを作るのはSIerでしょうか。そうではないのは明らかでしょう。そのようなシステム、業務は企業のコアコンピタンスとなるものであり、その思想や設計は知的財産として保護すべきものです。そのようなシステムの開発を外部に出すことは考えにくいし、そもそもそうした高度な業務的スキルを有するエンジニアを外部に求めるのは困難であり、顧客企業で内製するべきものです。
ここまで考えたときに、ITエンジニアが進むべき4つの道が見えてきます。
事業会社の社内エンジニアになる
これまで述べてきたように、差別化のためのシステムを内製するエンジニアが必要です。事業会社はエンジニアを多数抱えることは出来ないので、少数精鋭で最小限ということになるでしょう。
高度なITスキルを有するコンサルタント的エンジニアになる
SIerのような外注企業が生き残る道はこれしかないと思います。事業会社がシステムを内製するとしても、そこにいるエンジニアは基本的に事業ドメイン内での情報化のエキスパートであるため、純粋に高度なITスキルが求められるような作業は誰かにやってもらうしかありません。それを請け負う人は必要です。但し、受託型ではなく、SES型(人月での常駐型)の契約になるでしょう。
クラウドベンダーのエンジニアになる
これまで述べてきたような状況になる前提として、クラウドの普及があります。だから、当然にクラウドベンダーのエンジニアになるという道はあるわけです。
それ以外の道
ITがこれだけ普及している以上、他にもITスキルを活かした仕事はどこかにあります。ただ、その道に進むというのは、いわゆるけものみちで生きていくということであり、ITスキル+アルファの組合せなど、何らかの強みを持たなければならないでしょう。
ちなみに、私が中小企業診断士の資格を取って云々とか、ブログを書いてどうこうとしているのは、この道に進むことを想定しているからなのですが・・・。
どの道に進むにせよ、ITで食べていくということが今より難しくなるのは間違いないと思います。人海戦術から少数精鋭に変わっていくからです。よって、この4つの道のいずれにも入れない人が相当数出てくることになるでしょう。
その分、ITエンジニアのステータスは向上し、報酬面でも相応の期待が出来るようになるものと思います。