CIO育成にITスクールとITコーディネータができること

昨日は私が講師をやっているスクール(Tech Garden School)の生徒さんの補習を、品川でやっていました。

補習の後で、生徒さんとスクールの代表者と私という3人で、いろいろ話をしたんですね。
スクールが何を教えるのかということだったり、企業の業務システム開発についてとか。

スクールが教えていること

Tech Garden Schoolは、プログラミングも教えるし、Webデザインも教えるし、スタートアップについても教える、幅の広いスクールです。それも、1人の生徒さんに、すべてを爆速で。

エンジニアを育てようという目的ではないのです。それよりも、まずはすべての領域を体験してもらおうというのが趣旨。
(このスクールからエンジニアになった生徒さんもいるんですけどね。)

スクールの方針として、「起業を目指しましょう」というのがありますが、「読み・書き・そろばん」の延長線上にあるITを学びましょうという考え方も強いのかなと思っています。(一講師である私の認識として。)

業務システム開発の現場で起きていること

業務システム開発の現場において、「ユーザ企業とシステム開発業者(SIer)の対立関係」は解消されていません。

要件定義して、見積が出てきて、そこで契約する。契約した後は要件の変更は認めない。もしくは、SIer側でかなりのリスクを見て、KKD(経験・勘・度胸)でバッファを載せる。
かなり大きめのバッファが載るので、契約金額が膨らんでいる。期間も延びている。

システム開発には長い期間がかかるから、ユーザ企業の業界での競争環境は変わる。だから、要件変更したいし、機能追加もしたい。でも、出来ないと言われる。おいおい、客の言うこと聞けよ!みたいなことになる。

そんなこんなで、プロジェクトが終わってみればバッファは使い果たして、SIer側には赤字が出たりもしている。(プロジェクトが一応終わったとして。)

もちろん、そういう旧態依然の進め方ではダメだと理解して、新しい開発手法を取り入れたり、違った形の契約をしたり、そういう努力をしている会社は(ユーザ企業もSIerも)あります。

でも、旧態依然型もかなり残っているように思います。

ユーザ側も勉強しなくてはならない

プログラミングやWebデザインを少しでも学べば、なぜエンジニアやデザイナーが、些細な変更の依頼を、さも嫌そうな顔をして聞くのかが分かるでしょう。

コンピュータというのは融通のきかない相手なので、それを使っている人たちも融通がきかなくなるわけですよ。。。ってのは冗談として、生徒さんに話を聞いてみると、些細と思っていたことが、いかに些細じゃないかが分かったと言ってくれる方もいます。

でも、教えている側(エンジニア)として、それで溜飲を下げても仕方ないわけです。ほら、俺たちの大変さが分かっただろ!とかじゃないんです。それでは、意味がない。

最終的な目標は、ユーザ企業とSIerが同じ方向を向いて、同じゴールを目指すことです。対立じゃなくて、真のパートナーになること。

そのためには、ユーザ側も勉強してSIerに対して強くなって欲しい。「強くなって」というのは、もちろん、客としての権威をふりかざすというわけではないですよ。それでは、対立構造が何も変わらない。

もちろん、SIerやエンジニアは専門家なのですから、努力をしないといけない。

ITコーディネータの立ち位置

私もその一員であるITコーディネータですが、その制度発足時に言われた役割は、ユーザ企業の経営者に寄り添ってIT活用を成功させるということでした。
誤解を恐れずに言えば、業者に騙されず、言いくるめられれずにいるための、ユーザ側の助っ人だったわけです。

ただ、それはユーザ企業が勉強しないで良いというわけではありません。ITコーディネータに丸投げすれば良いとか、そういう制度ではまったくない。
(ITコーディネータは、IT導入の時にだけ雇うとかではなく、顧問のような形で経営者の相談相手として存在するのが良いのです。)

CIO育成の必要性

スクールにしても、ITコーディネータにしても、その役割の一つはCIOを育成することではないかと考えています。

CIOというと大袈裟になるかもしれませんが、ユーザ企業内にITシステムのことが一応分かる人を育てるということです。
自分で作れなくても、どういう風に作っているのか、エンジニアやデザイナーは何を考えているのか、そういうことが分かる人です。

分かるためには、本を読んだり、誰か偉い人の話を聞くだけではダメ。自分の手を動かし、頭の中をフル回転させる経験が必要です。

スクールでは、企業の外で集合研修のような形で育成します。Tech Garden Schoolのように、かなり個人指導に近いところもあります。その利点は、カリキュラムが体系化されていて、教えた経験が豊富な講師がいること。料金が安価にすんだり、他社の仲間ができるといったこともあるでしょう。

一方、ITコーディネータは顧問として入っている企業で、経営者のIT顧問として相談にのりながら、経営者自身や社員のCIOスキルを高めるという役割を担うことができます。その企業特有の業務、システム、文化に沿った育成ができるでしょう。

その両方の立場にいる私としては、これからも、個人や企業のITスキルアップを応援していきたいと思う次第です。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。