人工知能を使うと何が変わるのか

昨日書いた記事でさらっと「人工知能が入れば・・・」ということを書いたのですが、一方で、それを使うにはノウハウがいるのだということも書きました。

私は、今年の始めにIoTや人工知能をテーマにセミナーをやったり、IBMのWatsonを使った仕事を最近始めているので、いろいろと調べているのですが、調べれば調べるほど、一般の方の人工知能への期待感や、それを煽る各メディアでの華々しいニュースと、その実際の間に大きな溝があるのではないかと思うようになってきました。

それは私が単に理解していないだけなのかもしれないので、その辺が怖いところなのですが、私の頭の中を整理する意味を込めて、まとめてみようと思います。

人工知能とは何か

まず、根本に戻って人工知能とは何かをおさらいしておきましょう。
人工知能学会のサイトにあるWhat’s AIが分かりやすいので、そこから引用してみます。

「人工知能」とは何だと思うでしょうか?まるで人間のようにふるまう機械を想像するのではないでしょうか?これは正しいとも,間違っているともいえます.なぜなら,人工知能の研究には二つの立場があるからです.一つは,人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする立場,もう一つは,人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場です.そして,実際の研究のほとんどは後者の立場にたっています.ですので,人工知能の研究といっても,人間のような機械を作っているわけではありません.
https://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/AIwhats.html

まず、この立場についての言及が重要です。いま、世の中に出ている人工知能も後者の立場だと思うので、少なくとも、目の前にあるITシステムなり、機械に人工知能を組み込んだからといって、人間のように振る舞って、何事も良きに計らってくれるようなことにはなりません。

答えの出し方と、答えの出し方の見つけ方

同じページからもう一つ引用します。

「推論」とは「知識をもとに,新しい結論を得ること」です.
「学習」は何か機械が勉強をする感じがしますが,ここでは「情報から将来使えそうな知識を見つけること」です.

推論についてはオセロゲームで、学習についてはPOSレジで、さらに説明が加えられています。
ここで重要なのは、たしかに人工知能は新しい結論を得ることも出来るし、将来使えそうな知識を見つけることも出来るけれども、その元になる知識(知識にはオセロのコマの配置のような「データ」だけでなく、オセロのルールそのものや、どうすれば勝ちなのかといった「要件・要求」のようなものの両方が含まれます)は、人間がきちんとアルゴリズムなりプログラムなりを作り込んで、教えてあげる必要があることです。

それでは、今までのプログラム開発と何が違うのか?と思うかもしれません。でも、これはやっぱり違うのです。今まではシステムが導き出す最終的な答えの出し方まで、すべてプログラムする必要があります。それが、人工知能を使うと、答えの出し方そのものはプログラムする必要はありません。その「答えの出し方」を見つけるための前提となりそうなデータやアルゴリズムは教えてあげないといけないわけです。

人工知能はドラえもんではない

そのことを指して、昨日の記事では「人工知能を使うにはノウハウが必要だ」と書きました。

何を当たり前のことを・・・と思われるかもしれませんが、世の中には人工知能に会計帳簿なり顧客への提案資料なり経営に関するデータを与えれば、経営戦略を教えてくれると思っている人もいるかもしれないのです。(そういう仕組みも作れないわけではありません。技術的にはできます。ただ、そのためには人工知能に与えるデータやアルゴリズムにどれだけの前処理、後処理が必要となるか・・・。相当のシステム開発案件になることは間違いありません。)

ドラえもんはロボットなのにあんなに流暢に喋ってくれますが、先に引用した2つの立場でいえば、前者の「人間の知能そのものを持つ機械」という立場で、現在の主流とは違う流れなのではないかと思います。

ということで

人工知能の実際を際立たせて書いてみました。人工知能と言えども魔法の技術ではなく、やはり銀の弾丸はないのです。

しかし、だからといって人工知能に意味がないのかというと、それは違うと考えています。

国の方でも、こんなことを考えているようです。

政府の知的財産戦略本部(本部長・安倍晋三首相)は9日、首相官邸で会合を開き「知的財産推進計画2016」を決定した。人工知能(AI)が生み出した音楽や動画、3Dデータなど、現行の著作権法で保護できない作品を守るため、制度創設に乗り出す。2016年度中に具体策を検討し、早ければ17年度にも新たな仕組みを設ける。
人工知能の著作権を保護 政府の知財本部が推進計画決定:日本経済新聞

人工知能が生み出した著作物というのがあり得るのかとも思いますが、星新一のショートショートを学習させた人工知能が超ショートショートを生み出したという話もありますので、あながちあり得ないことでもありません。

ということで、このブログではしばらく人工知能を追っかけてみようと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア。
合同会社井上研一事務所代表、株式会社ビビンコ代表取締役。
北九州市出身、横浜市在住。AIやIoTに強いITコーディネータとして活動。北九州市主催のビジネスコンテスト「北九州でIoT」に応募したアイディアが入選し、メンバーと株式会社ビビンコを創業。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。セミナーや研修講師での登壇多数。