眞鍋IDバレーの神髄を聞いてきた

今日、虎ノ門ヒルズフォーラムで行われた「次世代ITインフラの目利きになる」というセミナーに参加してきました。とはいっても、参加したのは最後のセッションだけで、そのセッションは女子バレーボールの眞鍋政義監督と、アナリストの渡辺啓太氏が登場するもので、まぁ、その2人が目的という、仕事なのか何なのか・・・といった具合でしたが。

volleyball_it
http://ac.nikkeibp.co.jp/itpa/lenovo0913/

バレーボールにはここまでITが浸透している

このセッションでは、眞鍋バレーのITに関する話がこれでもかというほどに出てきました。眞鍋監督が試合中持っているのがiPadであることはテレビを観ていれば分かりますが、アナリストの渡辺氏が使っているのはThinkPadとかYoga Tabletであることとか・・・。(このセミナーはレノボが特別協賛です。ちなみに、iPadのことは「タブレット」と表現されてました・・・。)

私が何より驚いたのは、DataVolleyというソフトがあり、これは全日本のために開発されたものではなく、世界中の主だったチームは使っているバレーボールの基幹ソフト的存在であったことです。そして、多くのチームはDataVolleyありきで運用している中、全日本チームでは監督や選手の要望に応じて独自のアプリも開発しているとのこと。つまり、DataVolleyを基幹に据えつつ、独自の工夫は別のアプリを組み合わせて使っているというわけです。ビジネスの世界で多くの企業がやっていることと同じですね。

また、数値データの分析とともにプレーの映像も最大限に活用しており、木村沙織選手などは試合中にもタイムアウト前の自分のプレーの映像を見たいと言ってくるとのこと。そうして、試合中にも自分のプレーを微調整していくわけですね。(その際に活用しているのがYoga Tabletだそうです。)

全日本チームには機械学習も導入されている

全日本チームが行っている基幹ソフトとの組み合わせの一つが機械学習の活用。セッション時のプレゼン資料ではSAPサーバという記述がありました。

機械学習で何をやっているかというと、相手チームのセッターが次にどのアタッカーにボールを上げるかという予測。ロンドン五輪以降、4年間のデータ投入と運用を行っているとのことですが、機械学習に基づく予測が当たったり、人間の予測の方が当たったり・・・という状態らしく、実際の試合での活用はまだまだ・・・という状態だそうです。

眞鍋監督はこのセッションの中でも何度も世界と日本の身長差について言及していて、この身長差を埋めるためにも作戦上できることは何でもやるという方針を明確にしていました。日本以外ではまだここまでのIT活用は行っていないのではないかという中で、機械学習にまで取り組むというのは、その方針の賜物ではないかと思います。

データの重要性

眞鍋監督がことあるごとに言っているのが、女子チームを率いることの大変さ。バレーボールにおけるデータ活用そのものは前任の柳本監督時代からですが、本格的に活用し始めたのは眞鍋監督が就任してから。

アナリストの渡辺氏は、練習時にもほぼリアルタイムにデータを見せることで、選手は目標と現状の差を理解し、練習が意味のあるものになることを強調していましたが、そのような方針を始めた当初は選手たちからの反発が強かったそうです。

しかし、練習時の日々のデータをチーム内で公表し、調子の良い選手から試合で使うというポリシーを徹底したことから、意識が変わり、選手自身が積極的にデータを活用するようになったとのこと。

眞鍋監督は「バレーボールはルールの緩いスポーツ」という表現を用い、データアナリストがいても良い、そのデータをもとに監督がプレーごとに指示を出しても良い、そんなスポーツはなかなかない。だからこそ、身長差のある日本はデータを最大限に活用して、日本独自の作戦を生み出していかなければならないと強調していました。

こうしたことは、ビジネスの現場でもそのまま当てはまることではないかと思います。特に経営体力に劣る中小企業は、身長差のある全日本と同じこと。だからこそ、データの重要性を意識する必要があるということですね。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。