アルティザンエッジの最後の日

先般よりお知らせしているとおりアルティザンエッジ合同会社は、明日、2017年4月1日より合同会社井上研一事務所に商号を変更します。アルティザンエッジ合同会社を設立したのは2013年7月。実際は、その1年前から屋号として使っていたので5年近く名乗った名前が今日で終わりということになります。その最後の日に、アルティザンエッジの歩みを振り返っておきたいと思います。

2012年 立ち上げ

2012年にアルティザンエッジという屋号を使い始めたとき、私はまだ会社員でした。なので、特に副業というわけでもなく、ただ自分で作ったiPhoneアプリをアルティザンエッジという屋号でAppStoreに載せていたという程度のことでした。ただ、それでも屋号について考えたり、Webサイトも作ったりしていたのは、いつか独立ということを念頭に置いていたからだと思います。

こんなことを書いています。

屋号を掲げた理由はもう一つあります。
人との緩やかな繋がりで成立していくと思われるこれからの社会の中で、一つの結節点としての役目を果たしたいということです。
インターネットが世界中を繋ぎ、ソーシャルネットワークがネットとリアルの垣根をなくそうとしているこれからの社会では、いわゆる大企業よりも圧倒的に小さく、個人よりは少し大きな存在が、社会を動かす原動力になると思います。
Artisan Edgeは、ITという分野で、その存在の一つになりたいと思うのです。

この思いは今も変わっていません。合同会社井上研一事務所という完全な個人事務所になることによって、いわゆる会社ではない協働のあり方を、今まで以上に考えていきたいと思います。

2013年 独立・法人成り

2012年の終わりに勤めていた会社がなくなりました。親会社への吸収合併ということで雇用は保障されていたのですが、私は会社を移るという選択はしませんでした。完全に個人事業主として独立することを決めたのです。幸い、当時のお客様(今もお客様です)からお声がけがあり、同じ仕事を継続できることになりました。これは非常にありがたいことで、生活の心配をしなくてすんだわけです。

その夏には、早々と法人成り。個人事業主の屋号としてのアルティザンエッジは、アルティザンエッジ合同会社になりました。
ただ、こうした独立と法人成りという経緯もあり、アルティザンエッジ合同会社は企業として存在する意義というか、会社としてのミッションステートメントというか、そういうものがないまま生まれてしまった。人を採用するのかとか、何かサービスを立ち上げるのかとか、そういうことを考えたこともありましたが、結局、実行することはなく。だから、起業というより法人成りなんだなと思います。

法人登記した10日後には産業技術大学院大学で行われたJuly Tech Festaというイベントで、当時取り組んでいたSOS JobSchedulerというOSSに関する登壇を行います。その際、会社を作った!といって、皆さんから拍手をいただいたのは良い思い出です。
また、Tech Garden Schoolの講師にも就任しました。これも、独立したというのが一つのきっかけではあったと思います。
そんなわけで、独立するのも良いものだなと思ったり・・・。

ちなみに、本店は渋谷のコワーキングスペース。東京法務局渋谷出張所、渋谷税務署が管轄。

2014年 大過なく。でも、あがく

仕事としては安定していても、今から振り返ると特に何もなかったな・・・と思うのが2014年。その年を振り返る記事でも、こんなことを書いています。

日々いただいているお仕事についても、皆様のお陰をもちまして、大過なく、役割を果たすことが出来たと考えております。
本年も良い出会いに恵まれ、既にお仕事でご一緒させていただいた方、これからご一緒させていただける方との関係を深めることが出来ました。

「大過なく」。この一言に尽きるのかもしれません。
ただ、エンジニアが独立して法人成りした。この状態をどうにかしたいという思いもあり、Wantedlyで求人を出してみたりもしました。Webサービスも始めたりもしました。そうしたあがきの一つとして、年末にITコーディネータの資格取得に向けた取り組みを始めます。

2015年 ITコーディネータになる

2015年5月にITコーディネータ資格を取得します。この時に受けたケース研修は貴重な経験となり、今につながる人とのご縁もありました。

でも、ITコーディネータになったから仕事が激変するというわけでもなく。当たり前ですが、資格を取ったから仕事が来るというものではありません。
ただ、ITコーディネータ制度の主旨というか、その経営とITをつなぐという立ち位置は、アルティザンエッジ合同会社というか自分自身の社会の中での居場所を見つけ出すために有意義であったと思います。

資格取得以降、アルティザンエッジ合同会社は「会社」というより「ITコーディネータ事務所」という名乗り方に変わっていきます。

3月に本店を渋谷から日本橋のバーチャルオフィスに移します。東京法務局(本局)、日本橋税務署が管轄。
11月には秋葉原のレンタルオフィスを借ります。ただ、本店は移さず。

2016年 前兆

1月からTech Garden Schoolと組んでIT顧問サービスを始めたり、お客様先ではIBM Watsonを使ったプロジェクトが始まったりと、今につながるいろいろが出てきたのが昨年。Watsonについては5月頃から本を書く話が出始め、10月には私にとって最初の書籍が出版されました。

出版というのは本当に凄いことで、セミナー登壇などでお声がかかることが増えていきます。ほかのメディアにも書き始めましたしね。いつか本を出したいというのは、ずっと思っていたことで、40代くらいでなんとか・・・と思っていたのが、30代のうちに書けました。いま、2冊目も書いていますし、ありがたいことです。

4月に葛飾区青戸から中野に自宅を引っ越したことに合わせて、秋葉原のオフィスも撤退して自宅兼事務所に。東京法務局中野出張所、中野税務署が管轄。
中野にはICTCO(中野区産業振興推進機構)という機構及びその施設があり、それまで渋谷・日本橋・秋葉原と根無し草のような状態から脱しようと入会。ここから人とのつながりが一気に増えていったと思います。

2017年 第2創業期

そして、今年。2017年。
アルティザンエッジとしての5年は、箱(法人)は作ったけれど中身をどうやって埋めようか考え続けた時期だったと思います。もちろん、頭で考えただけではなくて、行動もずっとやっていて、いくつかの成果も出すことができたとは思いますが・・・。

そうしていろいろやって来たことがつながって、ようやく自分のやりたいことで箱の中身が詰まってきたと感じています。
そう、箱の中身が詰まったので、その中身に合わせて箱の名前を変えようというのが、今回の商号変更なのです。

アルティザンエッジは、私自身にとってのインキュベーター(孵卵器)であったのではないか。そんな気がしています。
ようやく卵がかえり、どうにか羽をバタバタし始めることができそうになってきた。

ということで、アルティザンエッジという屋号に感謝を込め、アルティザンエッジの井上に出会っていただいたすべての皆さんに感謝しながら、明日、合同会社井上研一事務所になります。’

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。