後輩たちへのメッセージには自分の仕事のポリシーが含まれていた

3年前に、私の母校である専門学校のグループ校の学生の方たちに対して、AIをテーマにした講演をさせていただきました。その時、学生さん向けということもあり、社会人の先輩からのメッセージも欲しいという話をいただき、講演の最後に入れたスライドがこれでした。

そういえば、講演の後にいただいた学生の皆さんからの感想の中に、本編のAIの話よりも「最後のメッセージがカッコ良かった」というようなものもありました。

ほとんどの技術は過去の技術からの積み重ねです

急がば回れ。基本的なことをきちんと理解することが、新しいことを学ぶときに役立ちます。

この時は本編がAIの話だったわけですが、AIにしたってここ数年で急に出てきた技術ではありません。歴史を振り返ると、それこそコンピュータの歴史と同期するくらいのことです。学生さんの立場でいえば、数学をきちんとやっておこうということでしょうし、数学をあまりやってこなかった社会人プログラマの立場(私のことですが)でも、プログラミングがきちんとできることがAIを学ぶ基礎となります。

だから、基礎を疎かにするなかれ。トレンドの技術ばかりに飛びついて受け売りを語るのではなく、技術の基礎をしっかりさせれば、なぜその技術がトレンドになっているのかとう視点で語ることができるようになります。

面白いと思う仕事をしよう

チャンスはどこかにあります。先輩に経験で勝つことはできません。でも、経験がない分、新しいことを勉強すれば大丈夫です。

これ、ちょっと前に若手のエンジニアの人が言っているのを聞いて、そうだようなぁと膝を打ちました。私が若手の頃はまさにそうだったと思います。回りの先輩社員がCOBOLかVisualBasicをやっている頃にJavaだのStruts(まだ国内事例が少ない頃)だの言ってましたからね。
そう思えば、ITコーディネータの諸先輩がたくさん居る中で、当時まだ駆け出しだった私が講師のお仕事を戴いたり、ITC Conferenceに登壇させていただけることになったのは、AI・IoTにちょっと先駆けて取り組んでいたからだと思います。
やっぱり、勉強って大事です。

ちゃんと成果を出しましょう。成果を出さない人の話は聞かないのが「大人の世界」ってものです。何を言うかは大事、誰が言うかも大事。

これもまた大事。大人の世界の真理の1つだと思います。何か成果があって、回りが話を聞いてくれていても、成果を出し続けないと、そのうちみんな離れていくよ・・・という。怖い怖い。耳が痛い。

待つしかない時もあります。その時にジタバタしておくことが大切。

いつも順風満帆ということはないのです。特にサラリーマンの頃はそうだったと思うし、フリーでも少しその割合は減りますが、やっぱり待つしかない時はあります。いや、フリーだとライスワークが必須なので、むしろ・・・かも。
ただ、そういう時に何か面白いことを始めるためのジタバタはやっておかないといけないと思うのです。

一人でできる仕事はありません

少なくともお客様のいない仕事はありません。

当たり前のことなんですけどね。忘れてはなりません。

人とのつながりを大切にしましょう。チャンスは自分では作れません。

私の今までを振り返ると、ほとんどすべて人とのつながりの中でいただいたお仕事です。自分から営業していただいたというのは、全くないのではないか・・・と思ったりします。それもそれで問題な気がするし、少しは自分で営業ができる人にはなりたいと思いますが。あと、本を書いて出したというのは営業ツールになったという実感はあります。

人とのつながりを作るには、いろいろなところに出向くとか名刺交換するとかもありますが、それより重要なのは成果をきちんと出すことだと思います。そうすれば、リピートでのお仕事をいただいたり、その様子を見ていた他の方からお声がけをいただくということもあります。

いずれにせよチャンスを自分で作ることはできないのです。チャンスは誰かから与えられるものだと思います。誰も自分にチャンスを与えてくれないときもあるでしょう。その時は、先ほど書いたようにジタバタすることが必要です。自分でできることを勉強でもブログでもやって、自分の枠というか世界みたいなものを少しずつでも拡げる努力が、未来のチャンスにつながると思います。

最初に入った会社は、できればリーダーになるまでは頑張りましょう。

これは完全に若い人向けということになります。よっぽどブラックだと思ったらすぐに辞めましょうという話も付け加えましたが。
でも、基本的に中途で入った人には会社の目は厳しいものです。基本的に即戦力として採用しているはずですから、すぐに活躍できないとリーダーへの道は険しいでしょう。一方、最初に入った会社は、よほど酷い会社でなければ採用した社員を育てようとするはずですから、頑張っていればリーダーをやらせてみようということになります。

もし転職したり、フリーになったりするとしても、リーダー経験のある人とない人では評価が違うはずです。経験としても、人を動かす経験は貴重なものといえます。

ちょうど、また同じような(今回は学生さんではなく新入社員の方向けですが)研修のお話をいただき、3年前の資料を振り返って読んでみると、あの時の自分はたしかにカッコ良いこと言ってたなぁと思ったわけで。これは、自分の仕事に対するポリシーなのかもなと思うと同時に、「いまの自分もそれはできているな」という部分と、「耳が痛いな」と思う部分もあり・・・。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。