ITコーディネータとは何者か

昨日、ITコーディネータの皆さんとある打ち合わせに出ていました。(その打ち合わせのことをオープンにできる日もいずれ来ると思うのですが、ひとまず内容は伏せておきます。)

そこで、ITコーディネータとは何者かといった議論がありまして、ちょっと私が仕掛けたみたいになってしまったのですが・・・。

それで皆さんのお話を伺って感じたのは、ITコーディネータは「コーディネータ」であって「コンサルタント」ではないということでした。
この辺が、案外ごちゃっとなっているような気がしていて、少なくとも私自身がそんな感じだったのですが、昨日の気づきをいただいて視界がクリアになって気がしています。

コンサルタントは「推進者」

コンサルタントは社外にいながらにして、プロジェクトを推進する役割を持っている。
前にコンサルティング会社に(少しだけ)いた時に、クライアントは何か困りごとがあって、社内では解決できなくて、社外のコンサルティング会社に依頼するのだから、それに応えないといけないという話を聞きました。

確かにそのとおりだと思います。ITコンサルティング会社に依頼するのであれば、単純にITスキルが足りていないというだけのこともあるかもしれませんが、会社組織は内部でいろいろしがらみがあるもので、社内の人材だけではうまくことが進まないということもあるでしょう。

そうした課題に対して、コンサルタントはその専門性と、外部の人間であるという強みを活かして、解決策を講じていくことが求められる。もちろん、実際には経営者や社内のキーパーソンを通してという側面があると思いますが、コンサルタントが推進者の一人ではあるということは言えます。

コーディネータは「調整者」

昨日のお話の中には、ITコーディネータ制度ができるときに、その名称について「ITコンサルタント」では意図している役割に合わなくて、いろいろと言葉を探しているうちに「ITコーディネータ」という名前ができたという逸話があって、やはり制度設計している時からITコーディネータはコンサルタントではないという強い想いがあったことを感じました。

ITコーディネータのバイブルであるプロセスガイドライン(PGL)の中で、推進の主役はまずは経営者自身です。ITコーディネータはその支援をする人材であって、IT経営を進めるプロセスを知っているという専門性はあるとしても、推進者自身ではないというのが想定される立ち位置です。

もちろん、ITコーディネータは常に社外にいる支援者というわけではなく、社内のいるということもあるので、そうした場合はITコーディネータが推進者自身になるということもあるわけですが、その場合は社内にいる推進者という帽子と、ITコーディネータという帽子の2つを被っていると捉えると良いのかもしれません。(この2つの帽子論は、私がいまぱっと思いついたものなので、よくよく考えるとまた違った意見になるかもしれません。)

DXコーディネータ

私は最近から、北九州市ロボット・DX推進センターでDXコーディネータという役割をいただくことになったのですが、その制度設計でも、DXコーディネータと専門家は別になっています。

まず、クライアント企業の経営者や担当者から話を聞いて、全体的な支援の方向性をまとめていくのがDXコーディネータの役目。さらに、その支援を実行する専門家への依頼や、企業と専門家の間を取り持つという役割もあるのですが、いずれにせよ調整者としての動きが求められています。

このDXコーディネータや専門家は、行政による民間企業の支援という立て付けなのですが、この仕組みが民間企業間で動かせるとすれば、ちょうどITコーディネータがDXコーディネータの立場になるのかもしれません。

実際に日本全国にあるITコーディネータの組織がそのような活動をしているという話を聞きますし、その一部に私も参画しています。もちろん、ITコーディネータだけができるということではなく、幅広い人材の参集が必要とは思いますが、そうした活動がある程度の塊としてできる人材としてITコーディネータを挙げることはできるのではないでしょうか。

まだ、この辺の自分なりの結論がでているわけではないのですが、これからの活動を通して考えていきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。