私の考えるDXとIoT 〜久留米市DX実務講座 IoT1日目

昨日は、昨年度から引き続きご依頼いただいている久留米市DX実務講座のIoTセミナーでした。全2回の1回目。先々週はAIセミナーにも登壇させていただいたので、この時期は久留米に3回来ることになります。

「DX実務講座」と銘打ったシリーズなので、昨日はDXについての概括しつつ、その中でIoTがどういう位置づけであるのかというお話をしました。

私の考えるDX

DXは大きな概念なので、人によってDXとは何かの説明が違うのかもしれません。
私もいろいろと考えてきたのですが、結局は大きな概念のまま理解するのが良いと思っています。
つまり、「データとデジタル技術を活⽤して、製品やサービス、ビジネスモデルを変⾰するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業⽂化・⾵⼟を変⾰し、競争上の優位を確⽴する」という経済産業省の定義のまま理解する。

これ、無茶苦茶大変なことを言っていると思います。だって、変革しまくりです。実践しようと思えば、かなりの覚悟が必要だし、しんどいこともたくさんあるでしょう。
だけど、それくらいの覚悟をして、やりきらないと、DXの価値はありません。

経済産業省はDXレポートのバージョンアップ版を継続的に出しています。上記の定義はDXレポートのVer.1(無印)で出てきたものですが、その進め方としてレガシーシステムのリプレイスを強調したのが悪手だった。で、いまで言うデジタイゼーションとかデジタライゼーションに矮小化してDXが理解されてしまったのです。
故に、DXレポートはバージョンアップして、悪手を訂正していくことになるのですが、この進め方はとてもDX的です。そもそものDXの定義(目的)はぶらさずに、手段として間違ったところはスピーディーに改善して、前に進めて行く。改善の俊敏さ(アジリティ)をきちんと備えているわけです。

DXレポートのバージョン2になると、DXからのバックキャストとしてデジタライゼーション、さらにデジタイゼーションを捉えています。つまり、安易なデジタイゼーションは変革の方向性を見失っている(というか、最初から方向性がない)ので、簡単に頓挫してしまう。もちろん、まずはデジタル化に手を付ける、やってみるという気概は重要だと思うのですが、どこかで方向性を決めておかないと「結局何がやりたかったんだっけ?」と、どっちらけになってしまうのはやむを得ません。

ITCプロセスとの親和性

私はITコーディネータ(ITC)ですが、そのバイブルであるプロセスガイドライン(PGL)では、IT経営を推進するためにまずは経営戦略から考えるということを提唱しています。経営理念や経営者の思いを全社員に開示して、外部環境などの分析を進めながら、会社としてのあるべき姿(ToBe)を作っていく。

そして、ToBeと現状(AsIs)Fit-Gap分析を行い、Gapを埋めていくためにどのようなITシステムが必要か(場合によってはIT以外の対応を含む)を考えていく。また、ITシステムを考える際には、会社のIT成熟度(社員のITスキルや、システムの運用能力など)を検討し、それに見合ったIT導入にする。一方で、IT成熟度自体もスパイラルアップさせていく・・・。

こうしたITCプロセスは、DXレポートにおける「DXのあるべき姿からバックキャストしていく」という考え方と見事に符合しています。
なぜ、バックキャストしないといけないかといえば、その時点ごとのIT成熟度を鑑みるからです。

私の考えるIoT

IoTは、実際のところそんなに大した技術ではありません。言ってしまえば、センサーでリアルデータを採集して、クラウドに送るだけです。もう一つ、クラウドからアクチュエータに指示を出してリアルの方を何か動かすのもIoTです。

実際にIoTを安定稼働させるには、それなりの苦労はあります。だけど、データが取れたから何なんだ?という話もあるわけで、後はその使い道です。会社の中で、業界の中で、社会の中で何らかの課題があるとします。その課題を解決するために、どこにどんなセンサーを使えば良いのか?どんなデータがあれば良いのか?それを考えることが、IoTの技術自体よりも遥かに重要です。

IoTといってもコンピュータの話なので、コンピュータはデータさえあれば何かできます。単純なIf-Thenのプログラムでも、機械学習を使っても良いのですが、とにかくデータさえあれば良い。だけど、いままでのITでは、データはコンピュータの画面の中でしか生まれません。パソコンであれ、スマホであれ同じです。
だけど、実際のお仕事はコンピュータの画面だけで完結しないのです。私のようにIT自体を仕事にしていれば、コンピュータの画面だけということもありますが、全体で考えればそういう仕事は少ないのです。

そうすると、いままでのITでは限界がある。データさえあれば良いけど、そのデータがないのだから。
そこで、いまデータがない領域、つまりリアルの世界のデータを取るために、IoTがあるわけです。つまり、IoTはITのラストワンマイルを埋める技術。コンピュータのリアルな世界での出張所みたいなものです。アクチュエータもやはりコンピュータの先にあるリアルの世界の何かを動かすものなので、ラストワンマイルを埋める技術なわけです。

そう考えると、IoTは極めて有用な技術ということになります。ITが活用できる領域をとことん広げていくことができる。

DXとIoT

DXは、いままでコンピュータの画面の中だけで起きてきたITによる変革が、IoTによってリアルの世界でも実現可能になったが故に必要になった概念と言えるかもしれません。だから、AmazonやUberのようなIT業界から異業種の進出が進み、ディスラプションと言われる現象が起きるわけです。

いままでのITの世界では、それこそGoogleやAmazonのようなプラットフォーマーがやってきた巨大なITから、サンデープログラマーが作ってきたような小粒でピリリと辛いITまで種々雑多なITがありました。大きくても小さくても、それなりの価値が生み出されてきました。そんな世界がIoTによってリアルにも広がってきた。(デジタルとリアルの融合という観点ではIoTだけでなく、MR=複合現実とかもありますね・・・)

DXから話を起こすと大きな話になってしまうのですが、方向性を見据えたら、手を付けるのは身近な一歩一歩からでもあります。
だからこそ、身近なところからIoTに取り組んでみましょうというのが、次回のセミナーでお話ししたいと思っていることです。

余談

いままで、久留米に行っても日帰りで一食すらなかったのですが、昨日は泊まりで久留米を楽しみました。

酒蔵松竹本店さんでは、焼き鳥。特に久留米名物のダルム。

大龍ラーメンさんで、久留米ラーメン。

と、いうことで、次回は12月8日に伺います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。