自分のニッチを見つけることの効用

きのう「ブログを成功させるための18項目のチェックリストという記事を書きました。そこで触れたのですが、ブログを始めるために最も重要なのは自分のニッチを見つけるということです。
今日はニッチを見つけるとにどれだけの効用があるかについて、私の実体験を踏まえて書いてみようと思います。

「自分が書く」というニッチは成立しない

私には長くやっている「INOCCU」というブログがあります。自分のニックネームをつけたドメインを取って、レンタルサーバを借りてWordPressを入れて、デザインにもそれなりに気を遣って、日々のことを色々書いています。エントリー数は2,500を超えていてGoogle Analystictを見ると150~200ページビュー/日といったところです。
これは成功といえるのでしょうか。ページビューでいえば個人ブログとしてはまぁまぁかと思います。そもそも私という人間を知っている人にとっては私の近況が分かるので、一定の意味はあります。しかし、私自身は成功とは思っていません。私のブログ成功の定義は少なくとも個人ブログの域を超えることです。INOCCUは何年たっても個人ブログでしかないでしょう。
問題はテーマを絞っていないことです。これはGoogle Analysticsを見ると分かります。来訪者の90%近くはGoogle検索からであり、直帰率も85%ほどです。この数値から読み取れるストーリーは、Googleで何かのキーワードを入れて検索した人がINOCCUを見つける。エントリー数が2,500以上あるので結構Googleで引っかかるのです。それでINOCCUに来訪するのですが、エントリーを読み終えたらすぐに立ち去り、二度と来訪せずに忘れ去る。そういうことだと思います。テーマを絞っていないので、読者は繰り返し訪れる理由がないのです。
何でも書くブログにある唯一のテーマは「自分が書いている」ということです。このテーマが通用する人もいます。芸能人です。芸能人は存在自体がニッチです。ニッチといってもそこそこ大きな市場の隙間を占めています。私のような一般人でも存在そのものはニッチではあります。「私」という人はひとりしかいないわけですから。たしかにニッチかもしれないけど、市場ではその隙間が見えないほど小さいのでニッチとして成り立たないのです。

バレーボール情報サイトというニッチ

私の数少ない成功体験は、1997年頃にやってたバレーボール情報サイト「V-Station」です。ネット黎明期で、バレーボール情報を提供するサイトは非常に少なかったのです。国内では全部で10サイト程度しかありませんでした。その中で私のサイトは最新の試合結果などを載せていたので人気サイトになりました。
雑誌にも何度も掲載されたし、借りていたレンタルサーバからはバナー掲載と引き替えにサーバ料金を無料にしてもらいました。日本バレーボール協会に近いところにいる人から情報提供を受けることもありました。ある雑誌から地元のバレーボールチームを取材する記者になって欲しいと依頼されたこともありました。(当時の私は中学生だったので、記者になる依頼は断りました。)
これは成功例と言えるでしょう。雑誌への掲載で知名度が向上し、最後は雑誌記者となる依頼まで受けています。趣味のサイトが仕事につながったわけです(上記のとおりその仕事を受けることはありませんでしたが)。ふつうの生活では知り合えないような人とも知り合っています。サーバ料金を無料にしてもらうという金銭的報酬も受けています。この機会を活かしていたら、今頃はバレーボールライターとして本を何冊か出しているかもしれません。
なぜV-Stationは成功したのでしょうか。それはバレーボールの最新情報を知りたいと思う人が一定数いたにもかかわらず、ネットでそれを提供する人がいなかったからです。今では日本バレーボール協会が自ら情報提供しています。しかし、野球やサッカーのように専門のネットメディアが今でも存在しないことを見ると、やはりバレーボールはニッチなのでしょう。これほどネット人口が増えた今ですらそうなのだから、1997年当時ならなおさらです。とはいえ、今も昔もバレーボールファンは一定数いるのです。まさにニッチです。

自分の中を絞り込めば大きな世界が広がる

こうした経験から学べることは、テーマを絞ることの重要性です。市場の中で一定の隙間(ニッチ)を獲得できるテーマの確立です。
何でも扱う個人ブログを持っている人は、テーマを絞って自分を限定してしまうのが嫌だと思っているのではないでしょうか。自分のブログなのだからテーマを限定せずに総力戦で行きたいと。それで良いケースもあります。自分をリアルで知っている数人、せいぜい数十人に近況報告したいのなら、むしろ自分に関することを何でも扱えばよいのです。
しかしブログにそれ以上の期待をしているのであれば、テーマを絞るべきです。テーマを絞ることは自分を限定しているのではありません。たしかに自分の興味を限定していくことになりますが、それによって自分を外の世界につなげようとしているのです。自分を限定するというより、自分を外の世界に解放する突破口を見つけ出そうとしているのです。
せっかくブログを書くのなら、テーマを絞ってニッチを獲得することを目指しましょう。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。