Web 2.0とは何か

人に、「Web 2.0って何?」と聞かれたら、どう答えるべきでしょうか。
それを考えてみたいと思います。

Web 2.0は、インターネット上で提供されているサービスの、最近の特徴を一くくりにして、そこに名前をつけたものです。
Web 2.0は、特定の技術を指しているわけではありません。RSSやRESTやAjaxといった技術は、Web 2.0的サービスを実現する技術として重要ですが、そうした技術がWeb 2.0なのではないということです。
Web 2.0は、マーケティング用語でもありません。これから説明するように、Web 2.0では、データが集まり、人が集まります。言わばメディアの役目を果たしますから、お金儲けの方法も生まれてくるでしょう。しかし、それはWeb 2.0現象の一部ではあっても、すべてではありません。

では、その特徴とは何でしょうか。小難しい言葉を使わない説明を試みます。

最も重要なことは、「すべてのデータをつないでいく」ということです。
データとデータがつながれば、そこでは新しいデータが生まれ、新しいサービスとなります。
そのためには、データはインターネットにつながっている場所に存在する必要があります。ただ、存在してさえいれば良いのではありません。つなげやすい形で存在する必要があります。
SunMicrosystemsのビジョンに、「ネットワークにつながっていないコンピュータは、コンピュータではない」というものがあります。Web 2.0では、それがさらに進化して、「インターネットにつながっていないデータは、データではない」のです。

しかし、「すべてのデータをつなげていく」ということは、必ずしもWeb 2.0の専売特許ではありません。
例えば、SOAはWeb 2.0より実装技術寄りのコンセプトですが、そのコンセプトというのは「ネットワーク上で動いているサービスとサービスをつないで、新しいサービスを生み出す」ということです。結局のところ、コンピュータのサービスというのはデータ処理です。サービスのところをデータに読み替えれば、同じことを言っていると分かります。

Web 2.0を、さらにWeb 2.0たらしめる、もう1つの特徴があります。それは、「くだらないデータもつなぐ」ということです。

例えば、本やCDのランク付けや感想コメント、どこのお店が美味しいとか、安いといった口コミ情報があります。また、八百屋さんの特売情報とか、ピンポイントの天気予報といった対象エリアの限定された情報があります。
それは、データとして構造的でなかったり、1人1人が発信する情報では何かに使えるほどのデータ量には至っていなかったり、データを活用する対象が狭く経済的な合理性がなかったりしています。
このような情報は、実は有効なものです。今までは、ただ扱いづらかったために、くだらないと切り捨てられていたに過ぎないのです。

そこで、データフォーマットを決めて構造的にする、1人1人の発信する情報を集めて巨大なデータにまとめる、さらに、コンピュータの処理能力の向上に頼って、データを活用するコストを圧倒的に下げ、経済的な合理性を確保する…。そうやって技術の力で解決すると、今までくだらないと思われていた、実はくだらなくない情報も、つなげられるデータになります。

くだらないデータを取り込んだ新しいサービスは、今までは切り捨てていた種類のデータも入っていますから、非常に斬新なものに見えます。人間くささを感じるようにもなるでしょう。それこそ、Web 2.0的と言われるサービスです。

Web 2.0を、2つの言葉で説明いてきました。「すべてのデータをつなげていく」こと、「くだらないデータもつなぐ」ことの2つです。これで、ほぼ言い表せていると思います。

コンピュータ技術の進歩、特にコンピュータが個人の手に入るようになってからの進歩は、まさに人々の能力を増大させる効果をもたらしました。インターネット登場以後は、人と人をつなぐことで、さらに顕著な効果をもたらすようになりました。
そうした人々の能力増大を目的(言わばコンピュータの使命)とした進歩の方向性は、現在のインターネットにおいても、普遍的に有効です。
その進歩の過程を、ある程度長いスパンで眺めた時に、明らかに何かが違うようになり、ステージが1つ上がったと感じられるようになりました。そこにWeb 2.0という名前を付けたのです。つまり「Web 2.0時代」です。
何が違ってステージが上がったのか、それが、この文章でWeb 2.0の特徴として説明してきたことなのです。
この現象(時代)は、数年は続くものと思います。

結局、長い文章になってしまいました。
これを、人に伝えるために、仮に一言で何か言うとしたら、どう言うのが適当でしょうか。
「Web 2.0は、コンピュータ技術の進歩の過程で、今、起きていることに名前をつけたものなんだよ。例えば、経済でいう『いざなぎ景気』とか、去年の『韓流ブーム』みたいに」
…、とかでしょうか。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。