これはオトナの道具、MEDIAS N-04Cレビュー

ここ5ヶ月ほどシャープのLYNX SH-03Cを使っていて、何のトラブルもなく満足していたのですが、その丸っこいボディが垢抜けない感じがしていて、ドコモの最新機種を見てみると何やらスタイリッシュなものもあるなぁと思って、MEDIAS N-04Cに乗り換えました。(ちなみにLYNXの方は売りに出される予定で、2万円くらいにはなる。良い時代。)

最新機種を見ていく中で外せなかったのはおサイフケータイ。ワンセグや赤外線はどうでも良いのですが、おサイフケータイだけはどうしても手放せないので、Xperia Arcはパス。Acroまで待つという手もありましたが、おそらくAcroはArcよりずんぐりとしているだろうし、個人的には中小企業診断士の通学講座の受講を始めたりといった新生活スタートの時期でそれに併せて新調したかったので、いま買えるものということでMEDIAS。

ただ、MEDIAS購入もすんなり決めたというわけではありませんでした。それはイヤホンジャックがないこと。音楽も聴くし、これからは講座の音声ダウンロードサービスを使って「聴く勉強」というやつも始めるから、イヤホンジャックがないのは痛いなと。それでMEDIASはパスだろうと思ったわけですが、USB変換ケーブル経由でイヤホンが使えないわけではないし、Bluetoothを導入すれば良いか・・・ということで踏ん切ったのです。

さて、そんなわけでMEDIAS。まだ1日程度しかまともに使っていないのですが、ファーストインプレッションということで最初のレビューを書いてみようと思います。
まず全体的な印象(まさにファーストインプレッション)だが、薄い、軽い、質感がある。MEDIASはぱっと見、「板」です。たいていのスマートフォンは板状ですが、かまぼこ板くらいの厚さがあるものが多い中で、MEDIASは薄っぺらい板。ちょうど20年前くらいのSFマンガがイメージしている近未来のデバイスって、なんか薄っぺらい板っぽいやつだったような気がしますが、MEDIASはまさにそれ。金属だし。持ってみるとひんやりする感じが所有感を満たしてくれる。(その辺がLYNXが残念だったところ&最大の不満点だったところで、LYNXはプラスチッキーなんだよね。フレームはアクリル。プラスチックとアクリルの塊。)

さすがに世界最薄7.7mm。MEDIASは次期モデルで防水対応されるらしいのですが、そうなると厚くなるのはやむを得ません。となると、現行MEDIASはしばらくの間、世界最薄でいられるに違いない?考えてみると、NECはガラケーでもμシリーズという薄型機種を出していました。私もμシリーズを2機種使っていたことがあるので、MEDIASに流れるのも当然と言えば当然だったのかもしれません。

実際に使ってみた感じは、まぁAndroidのそれだから4機種目(HT-03A→Xperia→LYNX→MEDIAS)のAndroidとなる私にとってはどうといったことはありません。Android2.2を使うのは初めてだから、その辺で洗練されてきたなと感じることもあるし、MEDIASがちょこちょこと調整してきた部分も良い感じです。

Android使い(というかiPhoneを含むスマートフォン使い)が最も気にする部分って、なんだかんだ言ってもバッテリー持ちではないでしょうか?私もXperia(初代)の頃はバッテリーにはさんざん苦しめられました。LYNXでも最初に気にしたのはバッテリーでした。そういうこともあって、通り一遍の省電力の工夫は体が覚えているといっても過言ではありません。

MEDIASのバッテリー持ちはどうでしょうか。スペックで言えば、MEDIASのバッテリーは1230mAhであり、LYNX(1400mAh)やXperia Arc(1500mAh)と比べると明らかに見劣りします。たしかにMEDIASの薄さからすると、容量で勝負するのは無理。しかし、結果から言えばバッテリー持ちに関する問題はありません。さらに言えば、いままで保有した4機種の中で最も良いとすらいえるのです。

実績を示そう。私のMEDIASは購入直後であり、まだバッテリーが安定していない時期です。だから、ある程度使い込んでいけば、さらに良好な結果が残せる可能性が高いといえるでしょう。

7:30 家を出る 100%
↓ Bluetoothで音楽を1.5h聴く
10:00 会社に到着 70%
↓ スケジュールを見たり、休み時間中にTwitterを使うなど
↓ 同期設定ON、twicca、facebook等の同期も1時間程度の間隔で設定
20:30 会社を出る 35%
↓ Bluetoothで音楽を1.5h聴く
22:00 家に着く 14%
↓ 無線LANにつないだりして酷使
0:00 自動電源OFF 0%

16時間半ほど使えました。うち3時間はBluetoothで音楽を聴いています。日中、使用頻度が低いときに1時間あたり3~4%程度の消費となっているのは、もう少し設定上の工夫の余地がありそう(タスクキラーでバックグラウンド処理を殺すといったことは一切やっていない)ですが、購入直後でこれなら、かなり良い線行っているのではないでしょうか。なにしろ、Xperia(初代)の頃は、12時間持たせることが一苦労だったことを考えれば、天地の差です。

あとはバッテリー消費の20%程度を占めていたBluetoothをやめればさらに良いのですが、それはMEDIASにイヤホンジャックがないこととのトレードオフである。Bluetoothを使ってもこれだけ持つということが重要。ついでに言えば、MEDIASのマイクロUSB端子に直刺しできるイヤホンがエレコムから発売されます。早速注文したのですが、これを使えば24時間もたせることも視野に入ってきます。(繰り返しになりますがUSBとイヤホンジャックの変換ケーブル(同梱)を使えば、手持ちのイヤホンでも使えます。ただ、どうしても重くなったりするので個人的に嫌い。)

バッテリー容量が少ないのに、これだけバッテリーが持つ理由は、CPUのスペックにあります。MEDIASが搭載しているCPUはSnapdragon MSM7230 800MHz。Xperia(初代、Arc)やLYNXは1GHzのCPUを搭載しているのに・・・大丈夫か?と、思うところだが訳があります。

まずXperia(初代)とLYNXが搭載しているのは第1世代Snapdragon QSD8250 1GHzですが、MEDIASは第2世代のSnapdragon。そのため、クロック周波数は劣っていても総合的な性能がそのまま劣るというわけではありません。また、第1世代と第2世代ではGPUが異なっており、第2世代ではFlashなどのハードウェアアクセラレーションに対応し、シェーダ性能も向上しているのです。一方、Xperia Arcが搭載しているのは第2世代Snapdragon MSM8255 1GHzだから、これと比べるとMEDIASは完全に劣っています。

消費電力については、クロック周波数が低いほど省電力であり、また半導体プロセスが小さいほど省電力です(第1世代は65nm、第2世代は45nm)。つまり、クロック周波数が低く、半導体プロセスが小さいCPUを搭載したMEDIASが最も省電力なCPUを搭載しているということになります。それが容量の比較的小さいバッテリーでありながら、他機種と比べても良好なバッテリー持ちを実現している要因でしょう。

あとは、そのCPUの性能でAndroidがサクサク動くか?ということだが、それについては問題ないレベル。少なくとも私がいままで使ってきた機種と比べて動作が重くなったということは一切ありません。一つ不安があるとすれば、AndroidOSのバージョンアップに追随出来るかという点です。

Androidが今後どういうバージョンアップを果たしていくかは分かりませんが、一般的にはOSはバージョンアップするほど、より高い性能のCPUを必要とするようになります。MEDIASはAndroid 2.3へのバージョンアップが明言されているが、それ以降については不明です。

NECカシオのインタビュー記事などを見ると、その時点での最新機種向けに開発したファームウェアが旧機種でも動作するなら提供するということなので、スペックの低いCPUを搭載している現行MEDIASに最新ファームウェアが提供されなくなる時点が比較的早く来る可能性は否定できません。とはいえ、一般的には発売時点に搭載していたOSバージョンの次まで保証というのが日本のスマートフォンの一般的な姿となりそうですから、他の機種と大して変わらないのかもしれませんが。

つまりはバランスなのです。MEDIASは薄い。とにかく薄い。だからバッテリー容量には限界がある。でも実用的に問題のない程度で低いクロックのCPUを搭載することでバッテリー持ちの問題を回避した。このバランス感覚がMEDIASの真骨頂でしょう。思い起こせば、このバランス感覚は全盛時代のPalmを思わせます。いたずらにスペック競争をせず、やりたいことがシンプルにスムースに出来れば良いという「Zen(禅) of Palm」という思想がありました。

その思想を打ち破り、スペック競争を始めることでPalmの世界にマルチメディアやハイレゾという文化を持ち込んだのがSONYのCLIEシリーズでした。そのSONY(ソニーエリクソン)がXperiaでハイスペック&最新OSを売りにしているのはデジャビュ感でいっぱいですね。

図らずもPalmを思い出させることになりましたが、MEDIASはそのバランス感覚でAndroidをオトナの道具にしてくれたのではないでしょうか。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。