CRM基礎講座 第6回 セグメンテーションとブランディング

マーケティングでは「誰に何を売るか」を考えます。
販売の場面ではまさに「誰に何を売るか」であり、商品開発の場面では「誰に売るために何を作るか」に変わったりしますが、トータルとしてみれば「誰に何を売るか」です。
マーケティングとは単に販売戦略を指すのではなく、主に企業の外を向いた企業活動全体を指すのです。

市場を何らかの方法で分類することをセグメンテーション、分類された1つのエリアをセグメントといいます。
「誰に」とは特定の個人ではなく、1つまたは複数のセグメントを対象とする、ターゲットセグメントのことです。

企業は、ターゲットセグメント毎に受け入れられる商品を開発し、販売します。
1つの企業でも、ターゲットセグメントごとにブランドを設定し、そのブランド名で商品を展開して、ターゲットセグメント毎に異なるマーケティングモデルをとることがあります。
例えば、普及品のブランドでは値下げや増量といった戦略をとり、量販店やディスカウントストアに販路を開拓するでしょう。一方、高級品のブランドでは商品そのものだけではなく包装や宣伝に高級感のある演出を施し、販路は専門店などに限定するはずです。
ブランドによって、まったく異なるビジネスを展開しているわけです。複数のブランドを持つ企業は、複数の顔を持っている企業といっても良いでしょう。

ブランドは信頼の証です。何か名前をつければそれでブランドになるのではなく、長年の積み重ねが顧客の信頼を醸成し、ブランドと認識されるようになるのです。
高級品だけがブランドではありません。普及品でも「安いけど品質も一定以上である」という普段使いでの信頼感がブランドとなります。

ブランディングを図る上で重要なのは、コンセプトがブレないことです。ブレが発生してしまうと、ブランドへの信頼感は崩れます。
高級と思われていたブランドが急に品質が悪くなったり、安売りを始めたりしてはいけないし、普及品が急に高級志向をとるのもよくありません。

ブレないコンセプトを作るために重要になってくるのは、市場セグメンテーションと、ターゲットセグメントの切り出しの「的確さ」です。
結局、セグメンテーションに戻るのです。

CRMの考え方を持ち込むと、この「的確さ」が担保しやすくなります。
「CRM 顧客はそこにいる」によると、CRMを使った以下のような方法があります。

  • ダイレクト・セグメンテーション:「買うかもしれない」客を探すのではなく「買おうとしている」客を切り出す
  • タイミング・セグメンテーション:特定の購買タイミングを持つ商品の場合、タイミングを上手く測る
  • POS(販売接点)情報からPOI(情報接点)情報へ:POS(販売接点)から一歩遡って「買おうとしている」客のPOI(情報接点)を強化・活用する

顧客のニーズを際限なく追っかけていくと、セグメントはどんどん細分化されていきます。細分化されすぎたセグメントは市場規模が極めて小さくなり、そこに向けて商品を開発し販売しても、利益が出なくなってしまいます。従って、細分化したセグメントが一定の市場規模を持つようにしなければならず、ここでCRMを用いることで的確なセグメンテーションを実現しようというわけです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。