ITエンジニアがIoTをやって考えていること

IoTをテーマにした北九州市のビジネスコンテスト「北九州でIoT」、以前にもお知らせしたとおり、私たちIoT+AIもくもく会のチームは、昨年行われた公開プレゼンで採択されたチームの1つに入り、3月までは毎月北九州市に訪問してメンタリングを受けているという状況です。

メンターとして、Cerevoの岩佐さん、ABBALabの小笠原さん、マクアケの木内さんという、そうそうたる顔ぶれで、他にも北九州高専の先生などもいらして、毎月、刺激を受けることができています。本当に、有り難いことです。

チームメンバーのスキルセット

私たち(もくもく会の中でさらに手を挙げた)3名のチームは、全員がハードウェア系よりもソフトウェア系に強みを持っていて、ITシステムを作るということなら、それなりのスキルがあります。ただ、ハードウェアについては、いくらIoTをもくもくやっているといっても限界があるなぁというのが最近特に感じていることです。あと、3人がそれぞれ自分の会社をやっていることもあって、なかなか時間が取れない・・・というのが最大のネックかもしれませんが。

それでも、なんとか3月23日に北九州芸術劇場で行われるデモデイに向けて、作業を続けています。

最初、ハードウェアはチーム内で試作品を作るつもりでした。そのために、秋月行ったり千石行ったりマルツ行ったり・・・という定番巡りもしましたし、東急ハンズなどで電子工作ではないハードウェア(つまり筐体的な・・・)の準備をしてくれたメンバーもいます。

IoTとハードウェア

私はセミナーや研修の講師のお仕事もしていて、テーマはAIであることがほとんどですが、その中でIoTの話をすることもあります。Raspberry PiとかArduinoとかあるよね・・・、Grooveを使うとブレッドボード使わなくてもセンサーデータが取れる云々。さらにスマホもIoTデバイスとして使えるよねとか。

それもそのとおりで、何も間違っていません。また別のお仕事で日本全国(私は東京の一部と西日本担当なのでそれ以外は回っていませんが)のIoT導入企業を調査で回っているのですが、中にはスマホをそのまま使っている事例もありますし、ICカードなど既存のデバイスを有効活用していて、特にハードウェアを開発していないような場合もあります。

でも、やっぱりハードウェアを新規開発している事例も多くて、私たちが北九州でIoTでやっていることも、ハードウェアが重要なのです。そこから先は基本的には見える化とデータの蓄積ですから。データ蓄積して何するの?という疑問もあると思いますが、いくつかはデータ活用の具体的アイディアもでているし、それを実現するにはやっぱりデータの蓄積が必要なのは間違いありません。

どうやってハードウェアを試作するか

で、そのハードウェア。結局はもくもく会仲間の製造業の企業に試作をお願いすることになりました。ハードウェアを作るにはなんだかんだといってお金がかかります。北九州でIoTでは100万円の軍資金があるので、なんとかなりますが、ソフトウェア屋さんが基本的には自分の時間を投資すれば何か作れるのとは違うということが分かります。

ソフトウェアでの試行錯誤は非常に簡単で、作ったプログラムをちょこちょこと変えながら試してみることができますが、ハードウェアはモノにもよりますが、基本的にはそうは行かない。30cmで作ったモノを後で50cmにすることはできないわけです。ふつう。

あと、自分が何を作ってもらいたいかをはっきりさせておかないと、試作といえども依頼はできないのです。当たり前ですが。ソフトウェアだって、何を作りたいかがはっきりしていないと、何も作れないわけですし。発注側にも知識が必要です。

それでもなんとか試作というステップに進めたのは、その製造業の企業があったからです。つながりがあって良かった・・・。

ビジネス的価値をどう設計するのか

これはIoTというよりサービスデザインみたいな話になりますが、私のようにSIerで育った人間は、どんなシステムを作るかというゴールが見えると、とにかく納期までにゴールに到達するために手を尽くします。たぶん、そういうスキルは優れています。頭の中もそういう風にできている気がします。

でも、今回私たちがやっていることだと、それだけでは上手く行かないということも分かりました。たしかに、デモデイは一つのゴールで、そこに向かって何か作っていくことは必要です。ただ、それはあくまでデモだし、イベントの一環なので基本的には甘く見てもらえる世界です。でも、それに甘んじていては何もできない。ただ、デモデイで多少なりとも格好がつくだけ。

いま、自分たちが作っているモノ(ハードウェアだけでなくソフトウェアも含めて)に、どんな価値があるのか。ビジネス上でどういう成果を出せるのか。それをきちんと設計して、説明できないと、少なくともデモデイの後は相手にされないわけです。

そんなことは公開プレゼンの時に考えたのでは?と思うかもしれません。それもたしかにあります。しかし、少しずつモノができていったり、それを通していろいろな人の意見を聞いたりすると、同じモノでも新しい価値が見出せることもあるわけです。実は、こういう風にも使えるのではないか?とか、こういう利益の上げ方もあるのではないか?のように。

そうした価値がいろいろ見えてくると、それが実現した場合に、参入障壁をどう築くかとか(例えば知財とか)、事業の売却なども含めてどういうゴールを目指すのかとか、また新たに考えるべきこともでてくるわけです。

まとめ

というか、まだまとめられる状況でもないのですが・・・。

ただ、貴重な経験をさせてもらっていることは間違いないので、一区切り付いた後にきちんと整理したいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。