Let’s note QR4を10か月程度使ってみたレビュー

Let’s note QR4(CF-QR4STGAS)を昨年末に購入して、だいたい10か月が経ちました。
価格.comにレビューを初めて書いてみたのですが、書いてみたら2,300文字オーバーになり、読み返してみるとまだ書き忘れていることも思い出したので、アレンジ+追記して、こちらにも書いておこうと思います。

デザイン

Let’s note RZやQV以降の薄型ボンネットで、SRでも採用されてからは定番デザインになり、Let’s noteにしては高さ19.9mmと薄いボディになりました。

いままでは基本的にジェットブラック(黒)モデルばかりを買っていたのですが、新色のカームグレイはすこし茶色みのあるシルバーで落ち着いています。ディスプレイやキーボードが黒なので、その分締まって見えるというのもあります。持ち飽きしないデザインです。

処理速度

基本的な性能は第13世代Core i7-1370P(14コア/20スレッド)なので高いですし、CF-QR4STGASはメモリ32GBなので、どんな用途でも問題なく動作します。

Windowsの電源モードを「最適なパフォーマンス」、Panasonic PC設定ユーティリティで「熱とファンの制御」を「標準」または「冷却優先」にすると体感としてサクサク動くのが分かります。その分、ファンは煩いです。一方、「静音性優先」にするとファンは回っているものの明らかに静かになり、性能はそれなりになるといった感じ。(電源モードは「バランス」)

意外とこの「熱とファンの制御」が体感の性能に大きく影響するような気がするので、しっかり設定しましょう。PanasonicのMaxPerformerの動作に、この設定が影響しているのかもしれません。

WSLやDockerをゴリゴリに使った開発用途、ZoomやTeamsでのミーティング、さらにそれを同時に行うといった性能が必要なシーンでは、煩いのを覚悟して「冷却優先」、WordやExcelといった軽い用途では「静音性優先」と使い分けるようにしています。

グラフィック性能

Iris Xeなので、グラフィック性能は言わずもがな。これで3Dゲームをやりまくりたいという人もいないだろうし、ビジネス用途、開発用途では、特に問題ありません。

自宅では当機のIris Xeで34インチのWQHDディスプレイ+27インチのFHDディスプレイで本体はクラムシェル状態で使用し、事務所では外付けGPUボックスに入れたRTX3070で34インチのWQHDディスプレイ+本体ディスプレイという構成ですが、どちらも通常のWindowsの操作では体感の差はないので、Iris Xeで充分な気がします。

拡張性

Let’s noteなのでインタフェースは何でも付いています。もういらないと言われがちなVGAコネクタですが、仕事で伺った先で「これでも大丈夫ですか?」とVGAでしかつながらないプロジェクターを持ってこられたことが2024年になってもあるので、やっぱり安心です。

SDカードスロットも、1.5TBのmicroSDXCカードをアダプタに挿して常時使用し、第2のストレージとして使ったりもできます(本体のSSDも4TBに換装しているのに・・・自己責任で)。

また、上記のようにUSB-CがThunderbolt4なので、外付けGPUボックスも使用できます。(私の場合は主にAI用途で使用しています。)

右の棚の上に置いてあるのが外付けGPUボックスです。Let’s noteのUSB-C(Thunderbolt4)→外付けGPUボックス→34インチディスプレイという接続になっています。もう1つのUSB-Cには、ハブが接続されていて、そちらから電源供給や、有線LAN、Webカメラ、トラックボールなどがつながっています。(外付けGPUボックスからもPDでの電源供給が行われているようです。)

使いやすさ

長年のLet’s noteユーザーなので(Macに浮気していた時期も長いけど)、何ら問題なく使用しています。ホイールパッドも広くなって使いやすいです。タッチパネルも意外と使います。

当機(CF-QR4STGAS)ならではの注意点は、指紋センサーが付いていないことです。指紋でサッとログインするという使いやすさはありません。個人モデルでは指紋センサーは付いているのが当たり前のようですが、法人モデルは逆に付いている方が少ない様子。カメラがWindows Hello対応なので、顔認証でのログインは可能です。

持ち運びやすさ

273.2mm×208.9mmと、A4より小さいサイズで、1,059gですから、可搬性については何ら問題ありません。

もう当たり前ですがACアダプタを持ち歩かなくてもUSB-PDで充電できるので、薄型の充電器と組み合わせれば普段使いのボディバックでも持ち歩けます。

このオウルテックのPD65W充電器は、非常に薄くて有り難いです。ボディバックが膨らみません。

普段持ち歩いているのは、こちら。Anker 735 Charger。65Wなので同じなのですが、USB-Cが2つとUSB-Aが1つ使えるので、PCとスマホとか、スマートウォッチを同時に充電できて、出張時に便利です。

バッテリ

バッテリ持ちは良くありません。私の用途だと、だいたい3~4時間といったところでしょうか。まぁ、常駐アプリだけで30~40個ありますし、Slack、Teams、Chatworkは全部同時に動いているし、Docker Desktopも常時立ち上がっているし・・・なので、仕方ないのですが。

出先でもUSB-PDで充電しながら使うこともできますし、スペアバッテリーも常時持ち歩いていますから、実用上問題ありません。スペアバッテリーがあれば、3~4時間は6~8時間になるわけで、バッテリー交換に対応しているLet’s noteならではですね。

画面

タッチパネル対応ということでグレア液晶です。そこはちょっと気になります。ただ、Panasonic純正のプラバシーフィルター(高い・・・)を貼り付けるとアンチグレアに早変わり。持ち歩き方によるのでしょうが、私のように本体のままカバンに入れて(カバンにクッションは付いているものの)いると、ディスプレイにキーやホイールパッド型の傷がつきがち。ただ、購入時点で液晶保護フィルターが貼り付けられているので、いざとなったら、貼り替えるという手も使えます。

解像度は、1920×1280ドットとQVなんかよりスペックダウンしている(アクティブペンにも対応しなくなった)のですが、12.4型ディスプレイなので実用上の問題はないですし、縦方向が少し長いので狭く感じないようにもなっています。

モバイル通信機能

私がPCを買うときの必須条件としているモバイル通信機能(SIM対応)ですが、もちろん当機も対応しています。しかも、物理SIMとeSIMの両対応です(但し、同時に使用できるのは、1つだけ)。ドコモ系のSIMと、au系のSIMを両方使えるようにしておくと、どこでも通信できる感じで良いのではないでしょうか。

一部ショッピングサイトでは「LTE」と説明されていますが「5G」です。ドコモ契約の場合は、5GのSIMでないと動作しないので、その点は注意しましょう。

サウンド

いちおうステレオスピーカーですし、Panasonicも音が良くなったと言っているのですが、ハッキリ言ってイマイチ。特にMacBook Proとかのスピーカーを体験した人には残念すぎる音。

その昔、Let’s note RZを使っている時に、ある打ち合わせ(霞ヶ関方面)で自分が編集した動画を再生して見せたことがあるのですが、当時はモノラルスピーカーで音量を大きくしても、ぜんぜん聞こえなくて冷や汗をかいたことがあります。その頃と比べると、音量は大きくなったと思うのですが、やっぱり良くはないですね・・・。

コストパフォーマンス

まぁ、高いですよね。私が買ったときは40万円台の後半でしたが、2024年10月現在では最安でも50万円を超えている。恐ろしい・・・。
なので、長く使うことを前提として、月換算とかでコスト評価するしか・・・。(それでも高い)
もう、自己満足で乗り切るしかないかと。(でも、さすがにCore Ultra 2のQRが出たら、相当悩むことにはなる・・・。)

総評・Copilot+ PCはどうなるのか?

Copilot+ PC登場前のモバイルPC(でもメインとして本気で使える)としては、ほぼ完成形なのではないかと思える出来映えで、たしかに値段なりのことはあるPCです。(Let’s note好き補正は入っているような。)

Copilot+ PCについては、Snapdragon搭載機についてはビジネス用途だけならまだしも、自分のように開発用途があるとNG。Intel Core Ultraの第1世代搭載機はLet’s note FV5で搭載したバリエーションがありますが、SR、QRではまだですし、そもそも第1世代はAI PCではあるけれどCopilot+ PCで求められるNPU性能に到達していません。

おそらく来年春くらいにはCore Ultra 2(第2世代)のCopilot+ PCがLet’s noteでも登場するのではないかと思うのですが、いままでの対応状況を見ると、やはりFVシリーズから登場しそうで、王道モデルのSRはまだしも、今や特殊用途モデルともいえる2in1のQRにまで回ってくるのだろうか・・・。自分としては、QR4を買ったときの値段が値段なので、QR系列でCore Ultra 2が出るまでは買い換えを検討することはないと思います。ただ、いずれ出てきたらね・・・悩みますよね。

今年~来年のPCの最大トピックがCopilot+ PCのようなローカルでAIを処理するPCです。Windows 11も24H2が出て、同じOSの同じバージョンとは言えども、Copilot+ PC用とそれ以外で2系統のOSになったと論ずるニュース記事もあるくらいです。

実際、AIをローカルPC上でやる必要がどの程度あるのか?スマートフォン(Galaxy Z Fold 5)の方はいち早くローカルAI対応していて、画像編集や認識などがローカルで動くようになってきています。ただ、使っているか?と言われると全然使っていない。逆に使っているのはChatGPTをはじめとする言語系の生成AIばかりなのです。でも、それはクラウドが前提となることは当分変わらないでしょう。検索エンジンがローカルPCで動かないし、動いても仕方ないのと同じことです。幅広い知識を持っている、かつPerplexityがそうであるように最新の情報を検索エンジンから引っ張ってこれるような生成AIが言語系では求められます。そうすると、PCにNPUを載せてローカルでAIを動かすより(LLMは動かないのですが)、5Gでどこでもネットにつながっていて、いつでもどこでもChatGPTとかPerplexityが使えた方が便利なわけです。

そこで提案されているローカルAIの用途が、WindowsのRecall。ローカルPC上のデータや画面操作の履歴をローカルのAIで学習し、「いつか見たアレ」とかを言葉で検索できるようになるというものです。確かに便利かもしれない。

ただ、いまPCに搭載されているSSDって、256GBとかで、せいぜい512GB。私のように4TBに換装する馬鹿者もいるのですが、それはレアケース。それって、ローカルPC上のデータってあんまりないのでは?と思うわけで、どんどんOneDriveに入れましょう戦略なわけじゃないですか。となると、そもそもデータがクラウドにあるのに、ローカルでAI処理する必要ってあるの?何か矛盾してない?とも、思うわけです。

とまぁ、いろいろ考えるわけですが、これはCopilot+ PCを持っていない(というかお気に入りの機種で出てない)私の僻みかもしれないし、いざQRのCopilot+ PCが出てきて(価格を想像するだけで恐ろしいが)、ちょうどその時に羽振りが良かったりして買っちゃったりしたら、「いや~、これからはCopilot+ PCですよ。これさえあれば何年も使えそう!」とか言っている姿も思い浮かぶので、何とも言えねぇなんですけどね。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。