ITmediaでスマートフォンオブザイヤー2010特別対談という記事が出ていたので、読んでみました。
この手の対談ではおなじみの夏野剛さんに、アスキー総研の遠藤諭さん、それからITジャーナリストの神尾寿さんによる対談です。
前半はiPhone4の礼賛になっちゃってるのですが、後半はAndroid編で、特に遠藤さんがインテントの魅力について熱く語っています。遠藤さんは私が知る限り1年半前にはすでにインテントを熱く語っていたので、その辺の軸はぶれていません。
インテントというのは、Android OSが備えている機能で、あるアプリがインテントと呼ばれるメッセージを投げると、そのメッセージに対応できる別のアプリが名乗り出て処理を引き継げるというものです。Windowsでいうところのファイルの関連付けをもっと細かなレベルでやれると言っても良いと思います。
具体例を挙げると、検索ウィジェットで「Android」というキーワードを検索したとします。検索結果はブラウザに表示されて、その中にはGoogleのサイトもあるでしょうし、WikipediaでのAndroidの解説もあり、Twitterで誰かがツイートしたものもあるわけです。
ここでGoogleのサイトはもちろんですが、WikipediaもTwitterもそのままブラウザで表示できます。しかし、たとえばワペディアのようなWikipediaを閲覧するアプリを入れていたとすれば、検索結果のWikipediaのリンクをタップするとワペディアで表示しないか?とダイアログが表示されるのです。TwitterのリンクをタップするとTwiccaのようなTwitterクライアントアプリの選択肢が現れます。
ブラウザで検索結果のリンクをタップすると、あるインテントのメッセージが自動的に発行されます。Wikipediaを表示するというメッセージに対応するアプリとしてワペディアがインストールされていれば、そのインテントに対応できるアプリとして表示されることになります。
別の例を挙げましょう。ブラウザで何かを閲覧しているときに、そこでメニューを開いてみると、ページの共有という項目があります。選択すると、またTwiccaやEvernoteといったアプリが選択肢として現れます。Twiccaを選択すればそのページのURLを含むツイートが出来るし、Evernoteを選択すればそのURLをクリップできます。つまり、ページの共有から発行されるインテントのメッセージがあり、それを受け取ることが出来るアプリがあるわけです。
Androidでは、このインテントによるアプリ間の連携が実にスムースに行われます。OSが当初から備えている機能だから、当然といえば当然のことです。
私は2年近いあいだAndroidデバイスを常用してきました。その後、しばらくiPhoneに浮気して、またAndroidに戻ってきたのです。その理由は何でしょうか。たしかに日本で発売されるAndoridデバイスがおサイフケータイに対応したという比較的派手な理由もあります。しかし、もう一つ実に地味ながらも日々の使い勝手に影響を与えるものとして、インテントによるアプリ連携があったのは事実です。
インテントという考え方は、実にオブジェクト指向的です。とりあえずメッセージを投げてみる。そうすれば誰か、そのメッセージを扱えるモノが拾ってくれる。餅は餅屋。あるアプリが自らTwitter機能を有するよりも、Twitter専門アプリに任せた方が便利なのは当然で、Android OSの上で各種のアプリが責務を分担することが出来るわけです。
私はオブジェクト指向的ユーザインタフェースは操作性を向上させると思っています。Windowsならとりあえず右クリックしてみると、いま何が出来るかがわかります。Androidでもロングタップすれば同様のことが起きます。
以前、ある業務システムを作っているときに、「○○処理」というボタンが並んでいる画面案(いわゆる手続き的)を廃して、まず案件情報を表示して、その横にいまその案件について出来る業務のボタンを並べたことがあります。これもオブジェクト指向的ユーザインタフェースです。分かりやすいという評判を得ましたが、一方でデータエントリーだけを専門的にやっているユーザには使いづらいと言われたのです。たしかに、「○○処理画面」のような手続き的ユーザインタフェースが好まれる場面もあります。
スマートフォンのような個人がさまざまなことをやるデバイスについては、手続き的よりもオブジェクト指向的の方が良いのではないでしょうか。冒頭で挙げた対談ではiPhoneは「手順的」という話が出てきます。ここでいう手続き的ということでしょう。Androidのユーザインタフェースはオブジェクト指向的です。
インテントの魅力がもっと世の中に伝わり、さらにAndroidが普及するといいなと。私としてはそんなことを思っているわけです。