モバイル常時接続によるパラダイムシフト

私がPDAの類を使い始めて数年が経ちましたが(シャープのWiZから始まって今はGENIOe)、画期的なパラダイムシフトは、今まで2回ありました。1回目はシャープのZAURUS igetiと携帯電話によってインターネットに接続できた時。そして2回目がつい最近、訪れました。それがDDIポケットのAirH”サービスによるモバイルでのインターネット常時接続です。

AirH”サービスは、DDIポケットによるPHS網を使ったインターネット接続サービス(実際のプロバイダ機能は含まれないので、別途プロバイダとの契約が必要)です。「つなぎ放題コース」では、32Kパケットによる常時接続サービスが月額4930円(年間契約割引)で使用できます。

実際は、PDA側のバッテリの問題があるので、PDAとAirH”による常時接続が実現するわけではありません。例えばGENIOeではフル充電の状態から接続を始めても連続2~3時間程度でバッテリが切れてしまいます。とはいえ、PDAを2~3時間も使いつづけることはないし、PDAの電源がONになっている1日に数分×数回~数十回の間だけインターネット接続状態を持続できれば、それで良いのです。この条件なら、十分にクリアできるので、常時接続は実現できていると言えます。

PDA用のソフトは多くありません。PocketPCでは600本程度はあるので、1ジャンル毎に数本のソフトからチョイスできる程度の品揃えはあるのですが、それでもPC向けと比べると圧倒的に少ないのです。長時間使いつづけるPC向けソフトなら5000円とか10000円を超えるようなソフトウェアであっても投資することが出来ますが、PDA向けのソフトにPC向けと同額の投資をするのは、躊躇してしまいます。

PDAはメモリはPCに比べると圧倒的に小さいです。そのため、インストールできるソフトの本数にも限りがあり、特に辞書や地図のようなアプリケーションよりもデータの方が圧倒的にファイルサイズが大きいようなソフトの場合、そのデータの置き場所が非常に限られるという問題があります。

そこで出てくるのはWebアプリケーションです。Webアプリケーションはインストールの必要がありません。多少の使用料金が取られるケースはあっても、一度に5000円や10000円を超えるようなことはないでしょう。PDA側にはWebブラウザだけがあれば良いのですから、IE4.0ベースのブラウザが搭載されているPocketPCならもちろん、ZAURUSでも良いし、ハード的に非力なPalmでもPalmscapeなどがあるので問題ないのではないでしょうか。

そんな便利なWebアプリケーションがPDAの世界でさほど騒がれないのは、通信コストの高さのためでしょう。機能としては便利でも、1分毎に10円といった課金がされてしまう状態では安心して使えません。それを解決してしまうのがAirH”による常時接続サービスだと思います。たしかに AirH”の月額4930円は決して安い金額ではないのですが、Webの閲覧やメール送受信を含めてトータルで考えれば、妥協できる範囲だと思います。

PDAとWebアプリケーションの組み合わせは、もともと良い組み合わせでしょう。数年前に騒がれたThinClientを外に持ち出したものがPDAだと考えれば、ThinClient+LANの環境はPDA+AirH”で実現できたということです。あとはWebアプリケーション次第です。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。